和の住まい設計:稲上建築設計事務所

伝統建築のよさをいかした住まいづくりをお手伝い、古民家再生には公的助成もお得です。
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伝統構法の【耐震補強】柔と剛

伝統構法の耐震
壁強度ではなく、建物全体の「粘り強さ」で地震に抗している伝統構法の建物の耐震診断は限界耐力計算法が有効で、その結果、変形が概ね1/15以上の場合崩壊が予想されますので、補強が必要となります。

4621080814民家再生の実例 全国事例50
日本民家再生リサイクル協会
丸善 2009-01-28

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崩壊の恐れ
伝統構法の建物は、建物自体が大きな変形にも耐える建物ですが、古い建物の場合、小さな地震でも、劣化が原因で弱いところが簡単に破綻する可能性があり、その場所が主要な構造部分であったとき、建物が一挙に崩壊する恐れがあります。これが伝統構法の恐ろしいところです。かといって、木筋交いや鉄筋&ターンバックル、ましてや合板で突然強固な壁を作って補強してはいけません。

「柔」には「柔」
建物の特性を考えて「限界耐力計算」によりその耐震性を診断した以上、その示す弱さがわかった場合は、「柔」には「柔」でもって抗すること。

ということで、自ずと耐震補強ツールとしては、まず、劣化・損傷部分の補強と柱脚部の足固め(根絡み)を行った上で、仕口ダンパーなどの変形力を吸収する、いわゆる「木材の変形やめり込み」と追随でき、それを補完できる「耐震部材」を使います。荒壁パネルや仕口ダンパーが好例です。
仕口ダンパー
最近低価格化した仕口ダンパー使用の例(仕口ダンパーQMタイプ
(メーカーは限界耐力計算に力を貸してくれるようです)

仕口ダンパー(鴻池組)>>

「仕口ダンパー」がオーソリティーですが、その他にも認定を持つ新製品も続々と発売されています。

いずれも試験によりその性能が認められたものですので、その使用方法、取り付け方法は商品毎によく確認して取り扱い願います。

「剛」には「剛」
耐震診断への規制がある兵庫県などでは、「限界耐力計算」による安全性の計算には耐震助成をおこなっていません。こういった場合は、「一般診断」や「精密診断・保有耐力計算」によって安全性を確保しなければなりません。新築の構造基準と同じように、「剛」には「剛」で抗する必要がありますので、木筋交いや鉄筋&ターンバックル、構造用合板などで強固に強い壁、強い構面を作るしかありません。結果、古民家の縁側面などには多くの新しい壁が巡ることになり、「二間の柱間が襖で仕切られ・・・」も「両袖に柱と壁を加え・・・」とかなり閉鎖的な間取りになってしまいます。またそうした壁面を支える基礎の補填や柱の脚部緊結も必至です。

根絡みを入れた床下
本来フリーな柱の脚部を頑丈につないだ根絡み(角材)の様子
こうして伝統構法は、安全に耐震補強を行うことで、大変な費用を掛け、伝統構法ではなくなることに。伝統構法の骨組みを内在させた新しい建物となるのです。
4870712849日本の伝統建築の構法―柔軟性と寿命
内田 祥哉
市ケ谷出版社 2009-10

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柔と剛
堺市の山口家住宅(重文)では仮設的補強で、文化財的価値の温存を重んじる耐震補強が行われています。

山口家住宅メモ
1966年指定。現在は堺市所有。桁行13.8m、梁間9.4m、一重、一部二階、南面及び東面庇付、切妻造、妻入、本瓦葺
時代区分: 江戸前期
越前屋山口久右衛門を代々名乗った家である。江戸時代はじめ、元和元年(一六一五)の大火の直後建てられたと考えられる家であって町屋としては特に古く、かつ民家としてすぐれた手法をもつ家である。 (堺市堺区錦之町東1-2-3)

この建物の場合、江戸前期から後期、また大正・昭和に渡る増改築の歴史が輻輳した構造となっているため、またそうしたものが一体となって現在の魅力ある姿を醸しているために耐震補強も一筋縄ではいかないようです。

そこで、ここでは「仮設的補強」という概念で、伝統木造という「柔」なるものに、鉄骨という「剛」なる力で補強を行っています。一見何も補強を行っていないように見えるのが味噌で、でも・・・、中に入ると最初は大空間に目を奪われるのですが、目が慣れてくるとあれっという所に鉄骨の柱があることに気付きます。さりげなく濃茶色の150-200角の鉄骨柱がど〜んと入っています。

この建物の場合、半解体の修理であったのですが、当初は限界耐力計算を基に間仕切り部分の見え隠れに荒壁パネルを設置して、壁による補強を試みたこともあったようですが、そうすると、本来ないはずのところに壁を作らねばならず、また荷重の伝達も本来のものとは違ってきてしまい、文化財としての姿を損なうことになると判断されたようです。では、毎日何人もの来訪者を安全に受け入れるためにどうすればいいか?

そこで考えられたのが、仮設的補強。鉄筋コンクリートの基礎をしっかりそなえ、自立する鉄骨柱が踏ん張って、建物全体が横に揺れた時のつっかえ・つっぱりになる考え方です。垂直方向の荷重は、木造部分で支えて、横揺れの時に過大な水平のストレスが木造を襲って崩壊してしまうのを防ぐ。

堺市山口家住宅(重文)
堺市山口家住宅(重文)

横揺れは天井裏などの見えないところで、鉄骨やブレースを巡らせて鉄骨柱にその力を伝えます。そうすれば、木造部分が自立したまま、横揺れを被らずに建っていられるのです。

この構法のいいところは、いつでもその木造のオリジナル構法に戻すことができる点です。仮設的鉄骨構法の部分は元来の木造とは別に切り離してしまうことができるのです。軽い添え木といえます。

文化財価値の高い建物の場合、その典拠(よりどころ)としての authoritiesを確実に残すことが大事だとの考え方です。

現実の民家にはコスト的な問題はもちろん難しい構法ではありますが、安全とauthorities(本物性)の歩み寄りは必要かも知れません。

4584122423大阪 地名の謎と歴史を訪ねて (ベスト新書)
ベストセラーズ 2009-09-09

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木造耐震シェルター
上記の完全現代化耐震法から、一線を画す構法が「木造耐震シェルター」です。一部を鋼材で補強した大きなフレームを等間隔に並べて「伏見稲荷の連続鳥居」の様な状態ものもを家屋の内部(部屋内)に入れ子にする、というものです。これによると、たとえ2階が崩壊しても、このボックスが残る、その中にさえいれば、まさしくシェルターとして身を守ってくれるというものです。

木造耐震シェルターを用いることで、部屋が狭くなりますが、常居の場に設置する、寝室に使う、万一の時にここに逃げ込むということで、身を守れる可能性を格段にアップさせることができます。

長屋のように隣家と構造体を共有していて、自分の方だけ勝手に構造補強することができない場合に有効、また、建物全体を万全に補強するよりずっと低価格だということです。

大阪市では、こうした長屋事情を踏まえ、また進まない伝統構法の建物の耐震化のために2009年3月から助成対象の「耐震改修工事」のリストにこの「木造耐震シェルター」を加えその推進をおこなっているようです。

4822224236耐震補強-地震に強い家を実現する改修のノウハウ (日経ホームビルダー 住宅現場手帖)
日経BP社 2005-09

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伝統構法の免震

伝統構法を耐震化すると往々にして、伝統建築のよさが損なわれます。開放的な柱間に壁が付き、直交する架梁にブレースの斜材が入ります。
これでは耐震改修して改善になりません。
こんな場合の救世主が免震です。
たとえば、「鉄骨井桁組」で建物全体を揚げて、ステンレスボールを介してベタ基礎で受ける工法があります。
ゴムで受ける方法もありますが、これはボールの横滑りで力を逃がす方法で、地震での動いた後はテンション筋(ワイヤー)で元に戻る仕組みだそうで、床下スペースでメンテ可能です。
このほかにもどんどん新しい工法が試されていますので、情報収集してみてください。


登録文化財畑田家住宅の耐震補強


100321畑田家(登録文化財)

畑田家は、庄屋や村長を勤め村の経営に携わってきた旧家で、主屋はツシ2階のある規模の大きい民家。平面は標準的な田の字型になり、内部の架構も伝統的な技法になる。

が、改変も多く、転用材が散在することは、これまで住む継いだ証として目に入り、これもいろいろ想像を駆立て、ミステリアスで楽しい。

長屋門や板塀、堂々たる白漆喰塗の外観は、旧家の風格を良く伝えていて集落の記憶に残る景観を作っている。

今では、「住育」の場として当主や保存会の意志を受け止め、建物自身が語りかけてくれる。

100321畑田家鴨居の溝 100321畑田家敷居の溝
畑田家鴨居と敷居の溝は切り止め

100321畑田家小屋見上げ
小屋見上げ
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