文化財の時代区分について

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建築年代は竣工年

原則はそうです。棟札年のときもあります。普請帳等の古文書、近代文書を根拠にする場合、土地台帳や初登記(明治~昭和)のときの聞取り調査が根拠になるときもあります。たった100年前の記憶や記録は非常にもろくわからないことが非常に多いです。複数の時代根拠が出てきて50~100年の巾があるときには困りました。ひとりで判断しないことが大事です。

登録文化財のメインターゲットは、

築50年以上の近代建築(明治以降の近代和風・洋風建築)と言われています。また、最近は近世の建物(民家、町家など伝統的和風建築)も積極的に登録が進められています。

住吉山手 旧乾邸 渡辺節 暖炉とヘンリボーンのパーケットフロア
住吉山手旧乾邸(昭和前期)

Q:さて、近代とはいつまで遡れるのでしょうか?
A:「近代」とは、明治時代以降を指します。
Q:近世とはいつを指すのでしょうか?
A:「近世」とは、安土桃山時代と江戸時代を指します。

また、前期・中期・後期・末期の表現にも悩まされます。下記を参考にしてください。(例は国宝、重文その他気になる建造物です)

近 世

江 戸 (1615年(1603年)~1868年)

■前期 1615 ~ 1661(元和元 ~ 万治 4)
日光東照宮陽明門(寛永元)、飛雲閣(寛永7)、
岡寺書院(寛永21)、水無瀬神宮茶室、羽曳野・吉村家
富田林・旧杉山家、今井・今西家、堺・山口家
金地院茶室(寛永5)、二条城、竜光院書院・密庵(寛永)
尼崎・本興寺方丈(元和3)

■中期 1661 ~ 1751(寛文元 ~ 寛延 4)
出雲大社本殿(延享元)、
円教寺寿量院(貞享5)、慈光院(寛文)、旧鴻池新田会所(宝永4)
聚光院(元文4頃)、冷泉家(寛政2)、能勢・旧泉家
伊丹・旧岡田家、今井・音村家(延宝2)
丹波・旧友井家(元禄)、川西・多田神社(寛文7)
福崎・三木家(元文2)、橿原・森村家(享保17)

伊丹石橋家二階座敷 江戸後期
伊丹旧石橋家(江戸後期)

■後期 1751 ~ 1830(宝暦元 ~ 文政13)
孤篷庵忘筌、角屋、揖保川・永富家住宅(文政3)、今井・河合家
■末期 1830 ~ 1868(天保元 ~ 慶応 4)
旧グラバー邸(文久3)、旧緒方洪庵
今井・高木家(文政~嘉永7)、大浦天主堂(文久4)

ハッサム邸 バルコニー 明治後期
旧ハッサム邸(明治後期)

近 代

明治 (1868年~1912年)

■前期 1868 ~ 1882(明治元 ~ 明治15)
泉布観(明治5)、開智学校(明治9)、旧居留地十五番館(明治14)
■中期 1883 ~ 1897(明治16 ~ 明治30)
西宮・旧辰馬喜十郎家(明治21)、日本銀行本店(明治29)
■後期 1898 ~ 1912(明治31 ~ 明治45)
旧ハッサム邸(明治35)、今井・華甍(明治36)
大阪府立図書館(明治37)、旧ハンター邸(明治22築、40改造、昭和38移築)
赤坂離宮(明治42)

大 正 (1912年~1926年)

■前期 1912 ~ 1918(大正元 ~ 大正 7)
東京駅(大正3)、移情閣(大正4)、川西・旧平安家(大正7)
西脇・来住家(大正7)、帝国ホテル(大正12)
■後期 1919 ~ 1926(大正 8 ~ 大正15)
旧山邑邸(大正13)、旧鍵野家(大正13)

吹田旧西尾家住宅 離れ東棟 大正15 重文
旧西尾家住宅(大正後期)

昭 和 (1926年~1989年)

■前期 1926 ~ 1945(昭和元 ~ 昭和20)
西宮・松山大学温山記念館(昭和3)、甲子園ホテル(昭和5)、
旧摩耶観光ホテル(昭和5年)、綿業会館(昭和6)、
神戸女学院(昭和8)、名古屋市庁舎(昭和8)、
築地本願寺(昭和9)、六甲山荘(昭和9)、旧乾邸(昭和11)
愛知県庁(昭和13)、舞子・旧木下家(昭和14)
■中期 1946 ~ 1958(昭和21 ~ 昭和33)
日本真珠会館(昭和27)、世界平和記念聖堂(昭和28)
浦家住宅(昭和31)、通天閣(昭和31)、国立西洋美術館本館(昭和34)
■後期 1966~1989(昭和41 ~ 昭和64)
太陽の塔(昭和45年)
和歌山県建築士会館( 昭和41年)

江戸時代の元号メモ(数字は末年)

—-前期 1615 ~ 1661—-
元和10 寛永21 正保5 慶安5 承応4 明暦4 万治4
—-中期 1661 ~ 1751—-
寛文13 延宝9 天和4 貞享 5 元禄17 宝永8 正徳6
享保21 元文6 寛保4 延享5 寛延4
—-後期 1751 ~ 1830—-
宝暦14 明和9 安永10 天明9 寛政13 享和4 文化15 文政13
—-末期 1830 ~ 1868—-
天保15 弘化5 嘉永7 安政7 万延2 文久4 元治2 慶応4

注意

1)昭和後期は50 年経過していない場合、建設年代で使用できない(そもそも50年経過登録できない登録できない)。
2)建設根拠の史料内容により「年頃」可
3)「初期」や「末期」は根拠がある場合に限る。幕末は×。
4)「明治末~大正前期」など2つの時代にまたがる表現は不可。・・・ここがむずかしい。えいやっときめましょう。
5)大規模改修年代も記入。「昭和41年/平成25年改修」などと記載。どの程度の改修をいうかは定かではなく、消耗材の変更にあたる屋根葺替え、焼杉板張替え、ペンキの塗り直しなどの修理は含まず、登録要件に触れない大規模な増築・改修を考えておくといいでしょう。
6)着工か上棟か竣工かは問わない。
7)年の特定できないときは大正期が一番難しい。洋釘、硝子、設備などで近代か前近代かでまずは考えましょう。もちろん地域格差があるので、江戸の様式そのままの大正期の建造物がある地域もある。