登録文化財 修理の見積

080429登録文化財の修理

相談

登録文化財の建物の修理工事を検討しています。どうやって工事の見積をとったらいいですか?

答え

工務店探し

文化財や歴史的建造物、伝統建築等に地域で経験豊富な工務店の情報を集めてみましょう。

  • 県市等の文化財課に相談する、近くの文化財工事にかかわった工務店を紹介してもらう
  • 地域のヘリテージマネージャーや建築士に聞いてみる
  • 図書館で「修理工事報告書」で検索してできるだけ近くで、最近の図書の中で工事関係者リストを確認する

などして、辺りを付けてから、HPやSNSで工務店の情報収集をしましょう。

次に、数社に当たりをつけ、連絡とって相談に載ってもらうことになるでしょう。多くは現地を見せて欲しいと希望されるので見てもらい意見を聞きましょう。

工務店選び

  • 建設業の登録や施工実績の確認(役所で建設業の帳簿の閲覧や工務店よりの提示)
  • 実際に工務店を尋ねてみる、電話してみる
  • 施工事例の見学をしてクライアント等から話を聞いてみる
  • 代替わりもあるので事業継承の体制や協力専門業者の体制を聞いてみる
  • 工務店にとっての主なターゲットとマッチするか聞いてみる

見積前の準備

その際に、

  • 修理や改修に際しての希望や予算建て、資金計画をある程度示すことが大切です。
  • 図面があれば用意する。当然文化財評価を示す専門家の所見は忘れずに
  • 工事発注の責任者を決めておく。

登録文化財修理に対しての補助金が利用できるようなら、数年前からの準備が望ましいです。

文化財として保全したい点をはっきりさせ、費用面で難しく一時的に仮設的な(軽費な)改修にならざるを得ない場合は、将来本格的な修理ができるように、間に合わせ工事部分を元に戻せるように工事することを考えましょう。

080429茅葺き民家 日本民家集落博物館2

普段から工事の見積や発注になれていない場合、ここが大切

見積に際し、基本的な調査や実測等に費用がかかるかどうかをよく確認することが肝です。特命(工事を前提にした見積願い)か、もしくは他社見積との比較も積極的にしたいかどうか、最初に忌憚なく意見を伝えておくのが大切です。

見積は営業行為の一旦なので無料とされる工務店もありますが、最近は、

  • 人手不足
  • 後で見積する工務店が先に見積した業者の有益な工事情報を転用する、させるなどのマナー違反
  • 高度な技術者の減少
  • 文化財修理にかかる手間の多さ=経費がかかる≒儲けが確定できない

により、安易な見積依頼は最初からしてもらえないことも多いので、後からセカンドオピニオンのために相見積(複数から見積をとること)をするようなことはあまりいい方法とはいえません。

発注者として最初に

  • こちらの正直な予算(資金調達方法)
  • 業者選定への思わく、期待すること
  • 何をどうしたいのか・・・保全、修理、活用のための改変、住み心地(快適性や耐震性)
  • 発注者は誰か(個人か法人か)

をしっかり話し合っておく必要があります。

歴史的建造物の修理・改修市場は小さいので、その地域でかかわることのできる業者さんはそう多くなく、しかも同業者同士で横のつながりや助け合いもあるので、自ずと適正な業者さんで、かつ適正価格に落ち着くのが現状です。・・・ネットで見つけた最低価格を探るような「業者さん探し」ではうまくいかないかも知れませんね。

またせっかく遺ってきた価値ある建物であるならば、今ではできない工法でできていたり、前の改修の痕跡があったりします。次の改修の時のための「オリジナル」が何かなど調査記録を残すことも次世代への継承を考える上で大事なことです。よって、工事に際して記録をのこすことも工事の条件とすることを忘れないようにしましょう。

なお、歴史的建造物の修理・改修では、少なくても一般住宅の1.5倍~3倍はかかると心得ましょう。

070729舞子木下家住宅修理工事

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