登録文化財の曳家・・・現状変更の届出

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相談

登録文化財の所有者です。この度、前の道路の拡幅に当たり「曳き家」をすることになりました。

芦屋仏教教会RC3F建ての曳き家工事2 登録文化財 芦屋仏教教会 RC3F建ての曳き家工事
芦屋仏教教会* RC3F建の曳き家工事

登録文化財の所有者として、なんらかの届出など必要でしょうか?

 芦屋仏教教会*昭和2年(1927年)竣工、片岡安・片岡建築事務所設計、 高橋組施工、 RC造、地上3階、地下1階

答え 曳家は移築→現状変更!

曳き家は立派な「移築」行為です(建基法上も曳家は移築)。当然、敷地に対する配置も変わります。

よって、文化庁宛工事の30日前までに「現状変更」の届け出が必要になります(もちろん確認申請も必要)。国の登録文化財ですので、文化庁に届けるのですが、まずは市町村の教育委員会に相談してください(との文化庁の担当者さんのお話しでした)。きちんと手続きについて教えていただけるそうです。

「現状変更」(文化財用語)とは建築物の新築・移築、増改築、撤去、工作物の設置及び撤去、仮設物の設置、テントの設置、看板の設置、土地の形質の変更などを指しますが、多くは修理に際しての模様替え(旧状と変わる)で、通常は望見できる範囲において、1/4以下かどうかで届出の必要・不要がとわれます。1/4に達しなくても届出を出すことで、自治体のチェックが入り、修理や改変の履歴が文化庁に残りますので、助言がもらえたり、補助金を教えてもらったりとメリットもありますので、届出の相談は是非してみてください。当然、解体するときも現状変更届が必要です。

工事の30日前までには届け出ます。また工事完了後30日以内に工事の完了報告を忘れないように。

現状変更は、文化財としての良好に保存するためにも慎重を期するものであり、文化庁に審議を要する場合があります。

登録文化財の場合、重要文化財や国宝などの指定文化財のように厳しく縛るようなものではありませんが、変更内容によっては登録抹消もありえますので、念のため「早い目の相談をお願いします」とのことです。

基礎を切放し架台に載せて揚げる→基礎新設→レールを敷いてその上をコロを使ってスライドさせる。反力は自重、「引かず」に「押し」ます。最後に降ろし、新基礎と一体化させる。この芦屋仏教会館(2003年曳家)のケースは直線で移動、後退2m、2億円とか。曳き家工事中も曳き家のまっただ中でも建物の利用は可能です。

現状変更届の実態

某府某市では所有者からの相談にものらず、現状変更も無しで改修工事に入りました。登録文化財は国、文化庁の管理下ですので、市町村も都道府県も窓口でしかないとの認識がまだのこっているようです。丁寧になんでも相談でき、相談を受けるといった信頼関係が必要ですが、関係者も多忙です。地道に交渉しましょう。

屋根や外壁の仕上げのほとんどは消耗品で、適宜更新するのは当然です。修理更新の際に現状変更に当たるか不安な場合も地元の文化財課に相談しましょう。文化財価値を損なう修理改修により、登録抹消なんてことにならないように・・・。

神社の祠など小規模な建造物の場合は過半に達する材料の更新=現状変更には細かいチェックが入ります。といっても誰も現場までくることもなく、書類主義なのが現実。全国で一万棟を超える登録文化財の延命措置である修理・改修には実は多大な労力が必要です。が実際は数名の担当者がそれにあたっているだけです。

命に直結しない登録文化財制度には多くの人々の理解と努力が必要と思い知らされる日々【にちにち】です。がんばれ、みんな!!