沓脱の変遷と役割

ウチとソトをつなぐもの 沓脱の変遷と役割 – 2025/3/19淡交社 山澤 清一郎 (著)>>Amazon

〈内から外、外から内へ――その中間にある、あいまいな日本の領域〉
〈履物の着脱とその装置から解き明かす、新視点による日本の建築・空間論〉
寝殿造や書院造に代表される日本古来の建築では、御簾(みす)、蔀(しとみ)、障子、襖などによって空間が曖昧に区切られており、区切りの壁を持つ西洋建築との顕著な違いとなっています。そうした日本の建築と庭との間には「ウチ」とも「ソト」ともいえない縁側などの「中間領域」が存在し、そこでは履物の着脱行為を伴う昇降装置として「沓脱」が機能しています。この沓脱について、種類と変遷、精神的役割などの諸相を史料から解明し、今まで全く顧みられることがなかった分野に光を当てるのが本書。著者の山澤清一郎氏は造園会社を設立し自ら設計・施工に携わる一方、全国の日本庭園を魅力たっぷりに紹介するウェブメディア「おにわさん」の運営も手掛けています。本書はその山澤氏の学位論文『沓脱に変遷と役割に関する研究』〈京都芸術大学博士(芸術)〉 を書籍化するものです。
【区切りの曖昧な日本建築の「ウチ」と「ソト」。その中間領域で行う履物の着脱行為と装置から解き明かす、新視点の建築・空間論。】

080128叶匠寿庵の沓脱石

なんとマニアックな本だろうとの第一印象。数寄屋建築や茶室を設計するときには必ず登場する「沓脱石」。なぜ草履・履き物文化の日本空間に沓(靴)とはと常々思っていたので、とっさに手に取った本です。文献史料、絵画史料を目を皿のようにつぶさに見て「沓脱」を探して論文化しています。なかなか執拗な調査です。

沓脱板への傾注も読み応えありました。式台、縁、段落ちの踏み板も沓脱(結界)のひとつ。日本人の身と心に染みついた履き物を脱ぐ行為そのものに迫る研究です。

調査・設計の現場で、沓脱(石)は建築と庭園・露地をつなぎ結節点になるので、庭を描かなくても沓脱は描くのが通例。自然石か加工石か、歩幅や、踏み高さを考えなら画竜点睛の如き心持ちで計画・施工され、設計されるもの。

もう一歩踏み込むと、茶室や数寄屋建築における沓脱石にはその名石具合、産地、表面の肌触りや草履裏の滑り具合、打ち水の湿らせ方や雨水を逃がすわずかな勾配など、かなりの神経を集中させ、それを楽しむのが沓脱石。

土地の名石が配されたり、伝来のものを再利用したり、また、実用的に刻まれた加工石にさえ、心遣いを感じるだいじな句読点であり景色石である。

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淡交社建築部が手がけた茶室なので、正統な佇まいの安心の作例集です。勉強になります。

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