登録有形文化財 保存と活用からみえる新たな地域のすがた

登録有形文化財 保存と活用からみえる新たな地域のすがた

登録有形文化財 保存と活用からみえる新たな地域のすがた 佐滝 剛弘/著 勁草書房

「登録有形文化財」が1万件を超え、評価・価値付けとしての位置付けから、維持のために活用を苦悶するの時代に入っています。全国の登録文化財を見て回った記録ですがもう一歩踏み込んでもいいのでは。登録文化財の入門書としては全景をつかめる書といえます。

ニュースとしては、

「文化庁でも従来の「登録有形文化財の修復には直接お金を出さない」という方針から、近年は修復も可能な予算措置を行うようになってきた。例えば2017年度の予算では、登録有形文化財の外観、内装(公開部分)を美しく保ち、観光資源としての魅力を向上させる事業、いわゆる「美装化」という目的であれば、その費用を支援するという予算が組まれた。文化財の所有者や管理者に原則として50パーセントの補助率で重要文化財と併せて年間90件程度を支援しようという制度である。

もちろん、対象件数は必要なところからすれば全然足りないだろうし、所有者にこの情報がきちんと降りているかといえば、自治体の温度差もあって、私が実際に訪れて話をした所有者の中にも、この制度の制定について全く知らなかったという人もいたので、十全とはいえないが、「お墨付きは与えるが修復はご自分で」というスタンスからは変化してきているといえそうだ。

もちろん、この背景には、インバウンドの増加を謳うなど「観光立国」を目指す国の方針から、「観光資源に資する」という文言を入れれば予算が通りやすいという事情交流を深めたりすることで、地域が活性化することは間違いもある。とはいえ、歴史的資産の保存活用と観光振興は密接不可分であり、地域外の多くの人に見学してもらったり、交流を深めたりすることで、地域が活性化することは間違いない。後回しにされがちな、あるいは冷遇され続けたといっても過言ではない我が国の文化支援がこうした制度により少しでも所有者や市民のためになるのであれば、大いに利用していけばよいと思われる。」

遺産といかに向き合うのか

遺産といかに向き合うのか:「対話的モデル」から考える持続可能な未来 – 2023/4/7
ロドニー・ハリソン (著), 木村至聖 (翻訳), 田中英資 (翻訳), & 2 その他

文化財保存70年の歴史―明日への文化遺産 – 2017/6/1
文化財保存全国協議会 (編集)

戦後経済発展のもとで、破壊され消滅した遺跡、守り保存された遺跡の貴重な記録。
戦後70年、これまで遺跡がたどってきた歴史を検証し、文化遺産のこれからを考える。