登録文化財とは

2020.11.20文化庁の発表によると、なんと昭和45年築の建物が登録文化財になりました。最年少の登録文化財ですね。

脇田和アトリエ山荘

昭和から平成にかけて活躍した洋画家・脇田和のアトリエ兼山荘。設計者の吉村順三は当時東京藝術大学の同僚。一階を鉄筋コンクリート造のピロティとし、主要な室は木造の二階に配する。くの字形の長大な平面を東西に分け、東棟はリビングや寝室等とし南に大きな開口を開けて庭を望む。西棟は矩形平面のアトリエと書斎。設計者・吉村順三の作風が表れるモダニズム住宅の佳品。

「登録文化財」(登録有形文化財)とは、

国の文化財登録制度により、文化財登録原簿に登録(リスティング)された建造物などを指します。(文化財保護法第57条>>)

文化財登録制度のスタート

1996年に施行された文化財保護法の一部を改正する法律によって、保存及び活用についての措置が特に必要とされる文化財建造物を、文部科学大臣が文化財登録原簿に登録するのが「文化財登録制度」。近年の国土開発や都市計画の進展、生活様式の変化等により、社会的評価を受けるまもなく消滅の危機に晒されている多種多様かつ大量の近代等の文化財建造物を後世に幅広く継承していくためにスタートしました。

文化庁パンフレット「登録有形文化財建造物のご案内」2020>>

登録文化財の特徴

原則築50年を過ぎ、(1)地域の歴史的景観に貢献(2)時代の特色を表した造形(3)再現が困難、のいずれかが基準。国の重要 文化財と比べ基準や規制は緩い。内装改修や一部の外観変更に届け出はいらない一方、国の補助は実効性のあるものはなくまた、取り壊しの届け出を受けて も、文化庁は保存の勧告までしかできないので解体できます。

登録文化財の背景

日本の建築資産を考えるとき、今までスクラップ&ビルドで貴重な建物を簡単に壊してきたことが浮かび上がります。今後はストック(=今あるもの)活用への移行が必至。そこで、今存在する価値ある建造物、特に地域に親しまれた歴史的文化遺産を「建ったまま」でいかに活用し、その姿を残すか、また「まちづくり」という地域社会の枠組みの中でどう活かしていくかが問われています。

登録文化財への補助

こうして建造物や庭園を登録文化財として登録することは、国宝や重要文化財ほどではないにしろ、様々な助成制度が準備されていることでメリットが発生します。保存~活用 のための設計料補助や相続時の対象評価の実質軽減(1/3控除)もその中に入ります。単なる名誉だけでなく、実際に効力を発揮する制度ともいえます。

「文化財建造物及びその敷地の価額は、それが文化財建造物及びその敷地でないものとした場合の価額から、その価額に文化財建造物の種類に応じて定 める割合(重要文化財0.7、登録有形文化財0.3、伝統的建造物0.3)を乗じて計算した金額を控除した金額により評価することとした。」 (評基通24-8、83-3、89-2、97-2=新設)

ヘリテージマネージャーはこの制度推進の一助を担います。

登録文化財に関する小さな疑問にも答えられるようにつとめます。どうぞお気軽に問い合わせください。

注意:国以外の自治体が独自に「登録文化財制度」を設けている場合があり、国とは違った目的があり、その多くは何らかのメリットがセットになっています。まずは地域の文化財課にお問い合わせください。
【例】兵庫県登録文化財、神戸市登録文化財、福岡県小郡市登録文化財、新宿区地域文化財など