倉吉の町並み2011 旧明倫小学校と倉吉市役所本庁舎

鳥取県中部地震にお見舞い申し上げます。下記161028時点での被害状況です。

2016年10月21日鳥取県中部で最大震度6弱の地震発生。鳥取県中部を震源、倉吉市と湯梨浜町、北栄町らに被害。

建物の被害は住宅など3000棟以上、農林水産業や旅館などサービス業へも被害大。人的被害もあり。

住宅に限ると、倉吉市が1800棟以上と建物被害が最も多く、三朝町、北栄町、湯梨浜町、琴浦町らでも合計約700棟。その他公共施設や商業施設などの500棟近くに被害。

国の重文、三朝町の三徳山三仏寺文殊堂に被害。国の登録文化財倉吉市庁舎では耐震補強していたのにかかわらず被害。また「倉吉市打吹玉川」伝統的建造物群保存地区の白壁土蔵群では蔵の一部に被害。

2011年に訪れた倉吉市内の歴史的建造物の紹介です。江戸時代から近代にかけて多様な建物がまちの歴史を刻んでいました。こころゆったりするヒューマンスケールの倉吉を少しでも感じていただければうれしいです。

旧明倫小学校  旧明倫小学校

旧明倫小学校2011

旧明倫小学校建築概要:昭和30(1955)年築のRC造3階建、全国で3番目に建設された直径25mの円形校舎で、現存するものとしては最古。1971年まで明倫小学校の校舎として使用。

「最も経済的に造る」ことを信念に建築家・坂本鹿名夫によって考案されたロタンダ(円形建築物)のひとつ。立地条件にとらわれないコスモポリタン建築ともいえ、各階に扇形の5教室を配置し、どの方向からも風も日も入ることや、教師と生徒の距離感が近くなる(目が行き渡る)メリットもあり。円形校舎に螺旋階段とは、まるで非日常性あふれる学舎であったことでしょう。

直線廊下の木造校舎に通った筆者としては、この円形校舎と螺旋階段でしただろう「鬼ごっこはどんなだったか」をぜひ聞いてみたいものです。(幼い頃の空間体験はその後にきっと影響あると思います)

最近の動向:2012年度「倉吉ふれあい会館」(円形校舎)に係る耐震補強設計委託業務の発注。耐震性の問題もあり保存には賛否あり、活用への道は険しいかもしれませんが、2016年倉吉市はフィギュア博物館としての活用を計画している民間会社に無償譲渡する議案を6月定例議会に提案したそうです。

保存運動の起きている歴史的な建造物をむげに解体する力業は最近減ったようですが、結果、思い出が足かせになることにもまた意見が出るご時世です。夢と現実を重ね合わせるための冷静な議論を丸くスパイラルアップしながら積んでいってもらいたいものです。

倉吉市役所本庁舎(登録文化財の耐震補強例) 倉吉市役所本庁舎屋上

倉吉市役所本庁舎2011

倉吉市役所本庁舎の建物概要:昭和31(1956)年築、RC造地上3階地下1階建、建築面積1576㎡、打吹城跡の麓に建つRC造庁舎。造形の規範となっているものとして2007年国の登録文化財。

文化財データベースの解説では「ロ字型平面の本舎に、平屋建の議会堂が接続。構造躯体をコンクリート打放しで表現し、水平線を強調した外観、ピロティや中庭など開放的な空間構成も併せもち、丹下健三の初期の庁舎建築の特徴をよく示す」とあります。風光明媚な古都にきらきら輝く近代の名建築が市庁舎として建っている町、倉吉ってすごい。

丹下さんが打ち込んだモダニズムの楔ともいえる建物。痛々しいまでの耐震補強に重なる震災。築60年を経て、建物の意味、価値を問うこのたびの地震でした。

旧明倫小学校校歌 「ぼくらの校舎」