
建築条件について
- 市街化地域>商業地域かつ準防火地域
- 容積/建ぺい率 400/80%、1辺が都市計画道路
- 建築の用途制限:工場系の一部を除きなんでもOK(飲食、店舗、宿泊、福祉・医療、学校系すべて可)
- 高さ規制:道路・隣地斜線はほぼ自由で、北側斜線・日影規制なし
準防火地域の建築規制:木造2階建て500㎡までなので、
- 延焼のおそれのある部分(延焼ライン)に防火設備(防火サッシなど)を設けること
- 屋根:市街地における通常の火災による火の粉防止性能
- 外壁・軒裏:延焼のおそれのある部分を防火構造とするほか
- 高さが2mを超える以下の塀・門:『延焼防止上支障のない構造』
- どんなに小規模な増築・改築・移転行為であっても、確認申請が必要(2025建基法改正でリフォーム規模により建築確認要)
本来は、隣地境界線や道路中心線等から1階3m・2階5mの範囲で防火構造にすべきところ、現況は、下見板張りで木製建具で軒裏も木製とNGだらけである。周辺の火災があれば延焼を阻めないし、こちらの出火で隣家等に延焼してしまう。屋根は釉薬瓦であるので防火仕様ではある。昨今は無垢板・材に塗ることで防火性能を発揮できる防火塗料もある。また燃え残りを見込んでボリュームのある木製構造材や仕上げ材(太い柱や厚い板)を用いることも可能であるが、意匠性も問われる文化財には向かない。スプリンクラーなどの代替え措置でこうした弱点を補うことを検討する方法もある。
文化財建造物が都市計画道路にかかる
自分の敷地であれ、都市計画道路内に越境して建築物を建築(新築や増築)する時には、都市計画法第53条(または第65条)の許可が必要。今回都市計画道路内に越境している部分は木造平屋であるので、建築確認不要な耐震補強であれば越境部分(の平屋)も温存できるが、敷地内で建築確認必要な建築行為を行なう場合は行政と協議が必要である(将来道路化時には解体。建築確認時に当該建物全部の適法化を求められる場合もあり、緩和もあり)。
今回の登録文化財は基準時(通常昭和25年)にすでに建っていた既存不適格建築物(現行法に不適合する項目が多数)なので、本来は安全・快適な建物利用のためには、常に可能な範囲で適法化が必要(所有者の義務)。例えば省エネ基準、耐震性等構造、防火・防災、採光・排煙など不特定多数が利用する施設として当然求められる建物機能は、登録文化財の活用・生き残りに必須と考えられる。ただ建築基準法3条適用※が可能になれば、代替え措置を講ずることで建築基準法の適用除外が認められる場合もあるので行政と協議が必要である。文化財保護と建築物としての適法化の狭間で短期及び中長期計画を立てることとなる。
※安全性確保について建築審査会のOKもらうことで、建築基準法の適用除外が可能(法第3条第1項第3号)
歴史的建築物に対する建築基準法の適用(国交省HP)>>
都市計画道路上の建築の許可要件は、次のいずれにも該当し、かつ、容易に移転し又は除却できるものであること。(いつまでたっても道路にならない計画中の道路の場合などの実質的な運用)
- 階数が2以下で、かつ、地階を有しないこと・・・壊しやすい規模
- 主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であること・・・壊しやすい構造
以下の例は前面道路が都市計画道路であったため、道路化が決定した際に建物ごと曳き家した事例である(敷地内曳き家は建基法上は移築(という建築)行為に当たる)。
2mのセットバックをした上、バリアフリーのためか(旧銀行なので入り口に石段があった)、様式建築の重要な要素である基壇下部をカットし建物の重厚感あるデザインを損なった残念な「足切り保存」例である。端正なプロポーションを失い近代様式建築が跪【ひざまづ】いているように見える。活用と保存の狭間で苦悩はあったかと思われるが建築家、デザイナー、行政(各文化財課や建築指導課)の綿密な調整があるべきだったのではなかろうか。しかし活用のためには何かあきらめなければならない。
旧六十八銀行八木支店 道路拡幅で曳き家→ウエディング施設に再生
年代 : 昭和3(1928)築
構造及び形式等 : 鉄筋コンクリート造2階建、建築面積157㎡
所在地 : 奈良県橿原市八木町1-501-2
施設名:JourFerie la BANK(ジュールフェリエ ラ・バンク)
工事:2013年曳き家、用途変更
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