大型民家の大屋根瓦の葺替えと法遵守
公的補助で観光と文化財保存に資する大改修のひとつが大屋根葺替え事業です。>>高付加価値化された文化財への改修・整備促進事業(文化庁HP)

歴史的建造物は100年前後ぐらいで屋根瓦の葺替え時期がやってきます。・・・地震や風水害でそのサイクルが狂うときもしばしばですが。
文化財の世界で屋根は重要な建造物の部位なのですが、いっぽうで屋根葺き材はあくまで消耗品という考え方で、適宜更新(修理や葺替え)してよいとされています。
草葺きに葺き材の記名性はありませんが、瓦屋根は記名性があり産地や制作者(瓦製造や瓦細工師)がその地域性や由緒を物語るので、重文や指定文化財では全葺替え時にも元の葺き材や葺き方をそのまま残す保存修理工事が行なわれますが、登録文化財の多くでは、一般の古民家の改修と同じく全葺替えを行なうことができます。登録文化財では修理費補助も少なく、自己資金が潤沢でない場合も多く、多額を要する次の葺替えの周期を少しでも長くする必要があるからで、耐震性、耐候性、耐風性など考慮して最適・最新の改修をします。つまり
- 葺き土を使わず軽量化(耐震性アップ)・・・耐風性確保のための釘止め
- 下地の平準化と耐震性(水平構面の補強)のために構造用合板を野地板に使う
- もちろん杉皮などの防水層を防水シートに変える
- 本瓦葺き(半丸と平瓦の2部式)を軽量化やコストダウンのために本瓦風一体瓦や桟瓦葺き、焼き物でない瓦風屋根材(石綿、金属板、樹脂など)に変えることさえあります。
2025年建基法改正で大型リフォームに建築確認が必要になる場合がありますので、登録文化財とはいえ法遵守は必要ですので気をつけましょう。木造戸建の大規模なリフォームに関する建築確認手続について(国交省HP)>>
古民家の大屋根葺替え時に建築確認が必要なケース
2階建て又は延べ面積200㎡超え、かつ、大規模修繕や模様替え(屋根ふき材の改修を行うことで屋根を構成する全ての材を改修することになる場合、その改修部分の見付面積が過半であれば、大規模の修繕又は大規模の模様替に該当する。)・・・野地板垂木母屋の過半を取り替えると大規模あつかいとなる。
つまり、平屋で200㎡までならいかなる大改修をしても建築確認不要。それ以上の規模でも屋根材だけの葺替えやカバー工法は大規模改修に当たらず、建築確認不要。
登録文化財 屋根の葺替えと補助金
登録文化財の修理費補助は正直手薄です。
幸い兵庫県では
- 古民家再生支援事業と称して各市町村と県が連携(随伴)して最高2000万までの補助を得る
- 登録文化財を景観指定して景観補助を得る(助成率1/3、max330万×10年補助可能)
- 登録文化財が空き家なら空き家対策補助を得る
ことなどが可能ですが、他の都道府県では難しいと聞きます。
全国的な補助金としては、高付加価値化された文化財への改修・整備促進事業(文化庁HP)が屋根葺替えに使えます。
適法化について
文化財とはいえ、人が起居する、集まる、使う施設であれば建築基準法上の安全・快適は必要です。登録文化財は文化財として維持・保全が求められるいっぽう、活用もしてくれといわれています(生きた文化財:使われないと姿を消してしまう)。
活用する以上は「人の使う器」としての最低限法遵守が必要です。
とはいえ日本中の公共施設でさえ十分に法遵守が叶っているわけではありません(違法状態、既存不適格状態の両方ある)。耐震性が足らない建物、アスベストを使用した建物、採光の足らない建物、省エネ基準を満たしていない建物、防火性能や避難経路が劣る建物はいっぱい存在します。
いずれもその不適合の自覚のある建物には、努力義務が促されつつ少しずつ改善や建替えが進んでいるのが建前ですので、登録文化財の活用に際しても法遵守上どこが満たされどこが満たされていないかを自覚しながら、修理や改修、リフォームの機会に少しずつ適法化していきましょう。
.jpg)