文化財の修理 公共施設

【相談】

自治体の指定文化財で公共施設の修理計画と概算立てをしています。調査や設計ならびに工事費積算のお手伝いを依頼したいのですが、いかがですか?

合わせて文化財修理を手がけるとことのできる業者について紹介願えないでしょうか?

大阪適塾の奥座敷 襖の唐紙「五三の桐 小判」
大阪適塾の奥座敷床柱と床框

 

【答】

懸案の建物は、江戸時代の数寄屋建築として地域の名建築です。建設時には贅を尽くした建物ですので、現在ではその技法や材料のレベルが高いのでいろいろ心配なことと思います。

直近の修理時の記録をまず確認して、建物概要や修理歴、修理に携わった方々(専門職)を知ることからはじめてください。修理に関する資料は地域の図書館や文化財課に問い合わせるといいでしょう。

建物の概要や修理歴を把握できたら、ゆかりのある施工者に現地調査していただくと、どういった部分に修理が必要か、また修理の緊急度がわかることと思いますから、修理計画がたてやすくなります。あらかじめ悉皆的な調査と詳細調査の必要な箇所や職種を整理しておきましょう。

ただし公共工事は入札によるところが多いので、その業者が工事に関わる補償がないので、調査には当然費用が発生します。

過去の修理にかかわった施工者に直接相談できない場合は、地域で他の文化財修理に関わったことのある専門家に頼んでみましょう。

名建築は現在もそして今後も修理・営繕に多くの費用がかかることが予想されます。将来の傷みを見越して、常時の適切な営繕・見守りがいかに大事かを建物の管理部署がきちんと把握できていないと、常に刹那的な修理となり結果ますますのちの修理費がかさんでしまいます。文化財修理の専門部署が直接管理・営繕していない、指定管理者にゆだねているといったケースも多いのでそうした行政側の背景をとらえておくことも大切です。

丁寧な修理計画をたててください。

文化財建造物の保存修理を考える: 木造建築の理念とあり方 

2019/4/14 文化財建造物保存技術協会 (編集)

木造建築は適切な修理が継承されることで、今日まで保存されてきた。国内外の建造物保存修理の歴史や事例、理念、あり方について、技術者・行政担当者・研究者が会して検証したシンポジウムの記録集。