古民家再生と2025建基法改正 増築と改修

古民家の増築

2階建ての町家や古民家に何気なく増築計画することはよくあります。
水回りの拡幅や同棟での居室や納戸の増築が多いようです。

何㎡からの増築で建築確認が必要かどうか?10㎡以下の増築でも、防火地域・準防火地域内では建築確認申請が必要で、それ以外は通常10㎡を超えない場合(増築の繰り返しで通算10㎡です)、建築確認は必要ありません。建基法上は当然建築確認の要・不要にかかわらず常に現行法に近い建物の維持管理が義務づけられています。

一般的に都市型町家は1㎡でも増築すれば建築確認が必要で、そのちょっとした増築を構造的に既存建物(通常主屋)の延長に構造を一体化して増築することになると思います。下屋先に延長拡幅するもしくは妻側にがっちりひっついた増築がイメージしやすいです。

いっぽう、郊外型の古民家の増築は大きく一体増築(一棟増築)と別棟増築にわかれ、さらに一体増築の中で町家タイプと同じ一体化増築と構造的な縁を切った上で(構造上独立した建物を主屋に沿わせて)増築するエクスパンションジョイントEXP.J増築にわかれます。郊外型では10㎡を超えない増築に建築確認申請が不要になります。超えれば当然建築確認申請が必要です。

既存不適格建築物である町家・古民家はそのものが耐震性も省エネ性も現行法に劣ります。
そこへ建築確認申請を伴う増築で建物全体の適法性を問われれば、即、大仰な適法化工事が必要になります。もちろんそれは安心安全快適な住まいに必要な工事ですが、そこまでやらないといけないのか、ということになります。

今まで通り主屋を使った生活をしながら、ほんの少し部屋を広げたい場合にどうしたらいいか?

2025年建基法改正を機にそれまでの改正を含めの見解です。

110226今井の町家改修工事

増築はEXP.Jで1/2ルール

まず基本的にはEXP.Jを介して増築しましょう。EXP.Jつまり電車の連結部分のような緩衝部を介して主屋と増築部分がそれぞれに独立した構造でそれぞれの耐力を担うことになります。通常増築部分が全面積(主屋面積)の1/2を超えるようなことが少ないので、まず1/2以下として考えます。

増築部分が(既存不適格建築物の)既存主屋の床面積の1/2以下でEXP.Jで接する場合、建築確認での扱いは、既存部分は耐震診断+補強し、増築部分を現行法で構造計算することになります。増築部分の構造計算は通常の壁量計算でOKです。さらに増築が平屋(1階)なら、計算書は免除になるかもしれません(行政や検査機関に確認してください)。

増築部分が既存主屋の床面積の1/20以下で50㎡までをEXP.Jで接する場合、既存部分には適法化(耐震補強)の遡及義務がありません。主屋はできたら補強してください。

ただ、増築に際して既存部分でも改修が大規模な模様替え・修繕に当たる場合は、2階建てならその建物そのものが現行法に沿った審査が行われます。
※建築基準法の大規模修繕・模様替(建築物の主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根または階段)の1種以上について行う過半の改修等)に該当するもの。
※建築確認手続が不要な場合でも、リフォーム後の建築物は建築基準法の規定に適合している必要があります。が緩和規定で構造耐力上の危険性が増大しない場合には適用されない

省エネ基準への適合は2025年改正により、増築部分のみに求められることになり、増築がやりやすくなりました。が主屋改修も同時に行なうのなら是非できる限りこの際に主屋も現行法に近づけましょう。

一体増築したい場合はで1/20ルールで

主屋の 1/20以下かつ50㎡以下にしてください。この場合主屋は現況以上には弱くしないこと、増築部分は現行法基準(壁量計算)となります。小規模な町家が間口2.5間奥行き4間の場合、このタイプの増築は一帖分、よくある古民家で間口6.5間奥行き4.5間なら、3帖分の増築ならOKです。逆にこれ以上4帖半とか6帖規模の増築はEXP.Jを使うことになります。

150718今井の町家(構造模型)

〔改訂版〕既存不適格建築物の増改築・用途変更-調査、緩和規定、建築確認申請のポイント>>

2025/6/30
大手前建築基準法事務所株式会社 横内 伸幸(代表取締役・元大阪府建築主事) (編集), 大手前建築基準法事務所株式会社 築比地 正(顧問・元東京都職員) (編集)

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