文化財保護法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律等について参照>>
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/1402097.html
安倍政権の残したもの
文化財の「活用」は、もともと文化財保護法にも記されていたが、安倍政権は、観光や地域活性化などの視点から活用を重視し、2016年に「明日の日本を支える観光ビジョン」のなかで「保存優先」から「地域の文化財を一体的に活用する取り組みへの支援」へと大転換し、観光資源とする姿勢を明確に打ち出した。
そのおかげで文化庁の2020年度予算は10年前よりも50億近くアップし、約1070億を計上。約463億円を文化財の保存修理や史跡整備、防災対策などにあてたことは文化庁には驚きの予算配分であったことであろう。さらにこの予算とは別に「国際観光旅客税」を財源とする事業を実施し、98億4千万円が「日本博」や多言語解説の整備などに使われているが、逆に言うと文化財が稼がねばならなくなったということ。
こうした政府の旗振りに合せるように、2018文化財保護法改正後、文化財財保護の担当部署を教育委員会から首長部局へと移管した自治体も多数あり、「二条城」のように見慣れた文化財が人を呼ぶ施設に移行したケースも多い。
あの保存馬鹿と揶揄されていた保存に頑なな奈良県でさえ、2015年に埋蔵文化財を担う県立橿原考古学研究所が県教委から知事部局に移され、2019年に文化財保存課や文化財保存事務所さえも知事部局の所管となったことは大事件であった。
保存主義をたたき込まれた文化財屋が突然活用屋になるのは難しい。かといってチャラい店舗屋に文化財をいじられることには大変なストレスがある古い職人気質の残る業界、多様な人材が観光に跪きながら根性を発揮しなければならない踏ん張りどころであろう。(2020.09.18朝日新聞「文化財保存活用の両立図る」参照)
文化財保護法改正の趣旨・・・活用ありき、動的保存へ→2020年度より実質運用か
「過疎化・少子高齢化などを背景に、文化財の滅失や散逸等の防止が緊急の課題であり、未指定を含めた文化財をまちづくりに活かしつつ、地域社会総がかりで、その継承に取組んでいくことが必要。このため、地域における文化財の計画的な保存・活用の促進や、地方文化財保護行政の推進力の強化を図る」
頼みは、やはり観光・インバウンドなのは少し悲しい。・・・人口減は止められないので。
都道府県・・・「文化財保存活用大綱」を作成 奈良県など文化財観光地の無策に責任大
文化財の保存・活用に関する総合的な施策の「文化財保存活用大綱」を策定の予定。早いところでH31年度中とありそろそろ。「保存活用計画」需要を見越した受注先(文化財業界やコンサル)が動き出しています。→「保存活用計画」で検索!コンサル情報やすでにある保存活用計画書のPDFも入手できますよ。
兵庫県 地域遺産活用指針>>https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk47/documents/chiikiisansisin_honbun.pdf
主体は市町村・・・人口減社会で生き残るために
市町村は、文化財の保存・活用に関する総合的な計画(文化財保存活用地域計画)を作成し、国の認定を申請できる。住民の意見の反映に努めるために協議会を組織できる(協議会は市町村、都道府県、文化財の所有者、文化財保存活用支援団体のほか、学識経験者、商工会、観光関係団体などの必要な者で構成)しかし埋蔵重視型の文化財課ではこの辺りは無理なので、文化財建造物の取り扱いを含め活用絡みは観光部局に移りつつあるそうです。
【計画の認定を受けることによるメリット】
・国の登録文化財の提案可能・・・市町村の判断で、一棟から群でも登録へ
・現状変更の許可なども市町村が行え、国には届出だけでOKとなる
ただし、現在の文化財課などでは手に負えないので、HM的人材活用の必要性大
市町村のギアアップがないと、どんどん「落ちこぼれ文化財地区」が増える見込みです。
高齢化する文化財所有者問題
相続税や絶家、離家などで継承者がいない文化財をNPOなどに寄贈などして管理を移管する方向へ→ファンドと組んで、地域やHMの総力で維持・・・ここで大きく淘汰が起きる見込みで、益々、姿を消す文化財が増えると思われます。
登録文化財の今後
大きく補助が増えるわけではないですが、やる気(活用)のある地区(市町村)や建造物には他の省庁予算が流れてくるしくみのようです。(耐震化、美装化、人材育成、ファンドなど)・・・2020年度「文化庁 観光に資する文化財の磨き上げ事業」は観光予算を使っているので観光資源としての効果の数字化ができないとほぼ使えない補助事業。その他条件に沿うよう入念な準備が必要です。200225
継承者不在や相続税問題で今まで市町村やナショナルトラストなど非営利組織への寄贈で譲渡税を免れるしかなかったところが、NPOなどへも可能になる。ただし固定資産税や修理維持費は重くのしかかるため、活用(経済的自立)なくしてはなりたたない方程式です。が来たるべき中修理・大修理の補助金を目標に立てて計画的な建物保存と活用を進めるメリットはあるかも知れません。大枠から入って、予算に応じて詳細にしていく計画手法が必要です。
ミニマムインターベンション(最小限の改修)を旨とする文化財であっても、維持のためにはより仮設的(昔は姑息的、今は経過的と称す)改修を余儀なくされることが予想されます。登録修理の現場からの悲鳴がなりやまない昨今、思い切った建築力がためされます。振り切れるか大鉈、といったところです。
簡易な改修で良さを少しでも温存させるのがもちろん大事ではあるが、まずは「潰さないですむため」の大胆な簡易改修が必須となる模様です。きれいごとではすまされない事態がもうすぐそこに。
「古民家救済立法」と「民間力結集」で早い目の勝負が鍵です。
竜鬢畳の極上品 もはや工芸品
2019.2.2改正文化財保護法を学ぶ
~新たな局面に入る文化財行政の動向を学び、今後のヘリテージ活動を考えます~
平成30 年度兵庫県ヘリテージマネージャーアドバンス講習会 第1 弾
講 師 / 村上 裕道 氏 (文化庁地域文化創生本部研究官)
主催:ひょうごヘリテージ機構H2O>>http://hyogoheritage.org/
現在登録文化財のおける立ち位置には不安がいっぱいです。制度による支援がほとんどないまま、プレッシャーだけが所有者らに覆い被さります。改正文化財保護法で何が変わるか?変わらないのか?を見極めないと進めない。登録文化財制度推進の立役者のひとりとして、村上さんが神戸で状況説明していただけるものと思います。ヘリマネも知恵と異業種連携で問題打破しないと、文化財の「見送り業」になってしまいますよ。(>o<)
2019.3.2保存活用計画の作成方法を学ぶ
~文化財修理現場に おいて、改正文化財保護法で 認定制度化された 「保存活用計画」の作成方法を 学び ます ~
平成 30 年度 兵庫県ヘリテージマネージャーアドバンス講習会第3弾
講 師 / 尾瀬 耕司 氏 (神戸建築文化財研究所/兵庫県ヘリテージマネージャー)
田中 康弘 氏 (兵庫県教育委員会文化財課)
会 場 / 斑鳩寺 (兵庫県揖保郡太子町鵤709)
これからのヘリテージマネージャーにとって必要なスキルとして、保存活用計画の作成内容や留意点を学ぶとともに、文化財修理現場において、具体の計画に基づいた修理内容などを実践的に習得することを目的としています。
主催:ひょうごヘリテージ機構H2O>>http://hyogoheritage.org/
プログラム/
① 歴史的建造物の保存活用計画作成について~文化財保護法改正に伴うヘリテージマネージャーの役割~(仮)
② 県指定有形文化財 斑鳩寺庫裏保存修理工事概要説明・現場案内
2019.11.21-22文化財建造物保存技術協会セミナー
概論の他、菅田庵及び向月亭・門司港駅本屋・旧弘前偕行社の保存修理などの解説、文化財の耐震補強の講義が素晴らしいセミナー。おそろしく保守的な文化財村の世界観も味わえます。
>>http://www.bunkenkyo.or.jp/news/2019/09/post-75.html
日本の歴史的建造物-社寺・城郭・近代建築の保存と活用 (中公新書) – 2021/2/20
光井 渉 (著)
法隆寺や姫路城はじめ、日本には世界遺産に指定された歴史的建造物が多い。だが、役割を終えた古い建物でしかなかったそれらに価値や魅力が「発見」されたのは、実は近代以降のことである。保存や復元、再現にあたって問題となるのは、その建造物の「正しい」あり方である。歴史上何度も改築された法隆寺、コンクリート造りの名古屋城天守閣、東京駅、首里城……。明治時代から現代に至る美の発見のプロセスをたどる。