奈良の「空き家」考

021210奈良市の古借家

【相談】大正時代に建てられた大型借家です。再生できるでしょうか?

門塀・前栽付、抑制の効いた意匠性が感じられるかつての高級借家のようです。玉石に土壁の伝統構法で、かなり劣化が進んでいます。「軸」(木軸や屋根・壁の構成)は残っていますが、現代的な感覚での使用は難しいレベルです。(耐震性がない、すきまがいっぱいの木製硝子戸、断熱材はゼロ、水回りは超古型、雨漏りはないが屋根も限界、土壁はあちこちで崩落、床も柱も傾きあり、虫や小動物が共存する家)

【答え】慎重なステップで

耐震診断をしても評点が思わしくなく、まして劣化度によりより評点がさがると思われます。車社会でなかった時代に建っているので、道路事情も悪く「接道」要件を満足しないため、このままの敷地で建替えることもできません。(現行法では建築行為をする敷地は建基法上の道路と最低2m接する必要がある)

著名な観光地の裏路地に「大正文化」をとどめているという「郷愁」にはかられますが、活用にはハードルが高そうです。

この立地と郷愁を優先するとすれば、新築同然の工事費を投入することで、「大正レトロな瀟洒な邸宅」に蘇る=「町家再生」することが可能かも知れませんが、あとは資金の問題となるでしょう。

021210奈良市の古借家

用途地域と用途制限

資金となると余剰金による個人邸宅であるならいいですが、投資となると用途の問題がでてきます。賃貸としてバランスのとれる用途としては戸建て住宅では回収(利益を得るだけの家賃)が難しいので、店舗・飲食店への転用を考える必要があるかも知れません。

住居専用系の用途地域であれば、転用する用途や規模にも制限がありますので、十分調査する必要があります。地域が「特区」など別の網がかかって規制緩和があれば展望も開けますので、これも各専門機関へのヒアリングが大事です。

既存不適格建築物

現行の建築基準法・都市計画法には多くの点で不適合な「既存不適格建築物」で四号物(今回は木造2階建て250㎡)なので、「改修」(建基法上の「大規模な修繕」・「大規模な模様替え」)するならかなり大鉈をふるっても「建築確認申請」が不要で、今回のように「建替えられない敷地」でもほぼ新築同様のスペック(機能)を持たせる工事が可能です。

調査と計画

さて何ができるでしょうか?

役所調査と現地調査と簡単な耐震診断により可能性を提示。大概算で工事費も示して、段階的に活用方法の案を複数練ります。

可能性があれば、具体的な計画を概算を積み上げながら築き、計画作業に無駄がないように進めます。

つまづいたり躊躇があったりすれば、立ち止まって再確認し、安全確認して前進や方向転換を試みます。

そうして納得のいくストック活用のステージに上がっていくことができたらいいのですが、大概がそう楽観的には進みません。

サブリースに出せば、利益が減りますが安全圏が広がりますので、その地域に強いサブリース業者をさがすことも腹案に持ちつつ、いかに多角的に透明性をもって進められるかに期待して、問いかけをしていただければと思います。

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