街中の旧家の継承問題

140405貝塚の町並み 門と塀

大阪の市街地、少なくとも江戸時代からあった旧集落のなかに建つ元庄屋の屋敷がのこっています。今後どうやって保存や維持・活用をになっていけばいいか相談します。

【答え】旧村ですので十分な道幅の接道が少ない状況がマップからわかります。住居専用地域ですので、特別な緩和がなくとも店舗や介護・医療施設への転用は考えられますが、やはり車の進入・駐車がスムーズに行える計画が必要になります。また密接した近隣関係ですので、近隣への配慮に心砕くことになると思われます。

140405貝塚の町家 木瓜型虫籠窓、蛇の目石持瓦、出桁、卵漆喰、袖うだつの家

こうした密集地では近隣のコンセンサスを得ながら、本当は敷地の譲り合いでお互いに利のある解決策を根気よくやっていくことが必要です。

旧家となればプライドもありますので、人に頭を下げられないことは理解できますが、そうした変なプライドで自分たちだけで解決をはかると必ず行き詰まります。地域のまちづくり団体や行政に声を掛けて反応を得るなどの今まで行ってこなかった情報収集も大事です。「灯台もと暗し」ともいえる状況もこうした相談の場合多いので、上空からはじめて我が家を見る気分で、歴史や地図を読み返し、立地特製をつかみましょう。また親戚筋などで旧家は繋がっていますので、そうしたところからの情報も掘り起こしてみましょう。たいがいは同じ悩みをかかえていますから。

専門家の力を借りる場合は、当然コストがかかります。まずは市政相談や無料法律相談なども問題解決の糸口を捕まえることのできる手段になるかもしれません。

今後長期にわたる目算を立てようとされていると思います。その際当然、自分との次の継承者が目に浮かんでいると思いますので、次世代の感覚にもたって考えていきましょう。もちろん、先代の意向をどう汲むかは当然棟に刻んでおられる事と思います。

時代の経過ははやいものです。ほんの半年前、このコロナ禍をだれが想像できたでしょうか。

行政が先を見据えて施行している施策で使えるものをさがしましょう。また市町村の五年~十年計画もチェックして近未来の行政傾向も捉えておくといいかもしれません。

さて、ヘリテージマネージャーという専門名があります。一般にはその起こりが阪神大震災後の兵庫県で立ち上がった組織ですので、建築士を中心にした歴史的建造物の発見・記録・登録(指定)・保存・維持・活用を考える人々です。現在はほぼ全国にこれに通じる人々や団体組織があります。調査・記録、行政との橋渡しや、もちろん設計監理、工事などといろんな専門分野で人材が存在します。まずはいろんな見立てを受けて、人と目の前の建築を知りましょう。地元建築士会が窓口になっているケースが多いようです。

HMの仕事に活用をつなげたとき、お金の問題、活用する運営団体・事業者の存在がネックになります。専門家としては税理士、弁護士、土地家屋調査士、不動産鑑定士など士業のかたがた、活用事業者を束ねる団体もありますので視野を広げてご検討ください。

行政分野としては、都市計画、景観、建築指導、文化財、商工振興、地域振興などの課で情報と支援を探します。

うまくいけば思わぬ支援補助に巡り会えますから。

登録文化財所有者の会、古材文化の会、住宅遺産を助ける会などNPO的な組織も大変増えました。軒並み門をたたくのもどうかと思いますが、人との出会いは何かプラスになるかも知れません。

最終的に自治体への寄贈という話もよく聞きます。が最近の少子化・行政のスリム化傾向で公共財産を減らす傾向がありますので、そのハードルは高いとお考えください。

地域愛に根ざした「企業版ふるさと納税」制度を利用して、こうした歴史遺産継承に使うケースも見受けられます。地域に親近感を持つ企業さんをさがしてみるのもいいかもしれません。

140405貝塚の町家 ぎり保ちの家