奈良の近代 茶室考

近代奈良の幕開けは廃仏毀釈の嵐でもありました。

廃仏毀釈:仏教排斥のための運動のこと。仏法を廃し、釈迦の教えを放棄する意。「釈」は釈迦、「毀」はそしる、壊すという意。日本では明治政府の神仏分離令に基づく寺社排斥運動が有名。「仏を廃して釈を毀る」と訓読する。

三省堂 新明解四字熟語辞典

古寺の運命は奈良の茶室文化にも大きな影響を与えました。寺にあった茶室が近代数寄者らによって移築されて奈良を去りました。伽藍石や灯籠等の石造物、仏具や美術工芸品も同じ運命です。

そんな時に茶室文化を支えたのは、比較的前近代の産業を踏襲した奈良の近代財界(麻や墨など)。そうして何とか奈良に留まることのできた茶室のひとつが現在奈良国立博物館にある八窓庵(元大乗院からM25移築)。使い勝手よく、明るい、しかも現役の茶室として奈良の前近代をしのぶことのできる茶室です(江戸中期建設の茶室)。

事ほどさように奈良人が現代に伝える近代の茶室が2022-2023年度奈良市の調査で100ほど確認できたそうで、町家の店先のコーナー、店奥の端正な小間、さらに奥の離れの茶室、、、とちょっと一服のものからお稽古場、しっかりもてなす茶室まで奈良商人らの暮らしの一部として今も現役のものが奈良の茶室の魅力を伝えています。

奈良は京都より大阪との縁が深い奈良ならではの茶室風情があるのだそうで、古寺の古材を使ったもの、若草山や飛火野の絶景を望む開放的な窓を切ったもの、春日杉を贅沢に使ったもの等が奈良の近代茶室の特徴といえます。

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