歴史的建造物の活用 2025「4号特例」廃止 2019「用途変更」200㎡~ 

231016橿原市柿本家住宅

相談

第一種低層住居専用地域にある歴史的建造物の活用する場合の「用途」について教えて下さい。

2019年12 月、建築基準法改正→施行

国土交通省において戸建て住宅等の用途変更について、建築基準法の規定の合理化改正が施行。実際に計画される際は最新の情報にご注意ください。
■戸建住宅等の福祉施設等への用途変更に伴う制限の合理化
○ 戸建住宅等(延べ面積200㎡未満かつ階数3以下)を福祉施設等とする場合に、在館者が迅速に避難できる措置を講じることを前提に、耐火建築物等とすることを不要とする
○ 用途変更に伴って建築確認が必要となる規模を見直し(不要の規模上限を100㎡から200㎡に見直し)
○既存建築物を一時的に特定の用途とする場合も制限緩和
○段階的・計画的に現行基準に適合させていくことで制限緩和
○用途許可がスムーズに・・・「特別用途地区」を指定して条例を定めた場合等や、特定行政庁が個別に当該用途地域における環境を害するおそれがない等と認めて「建築審査会の同意」を得て許可した場合には立地可能

2019.12.20施行概要>>http://www.mlit.go.jp/common/001242723.pdf

2019.6.25施行>>「小規模な建築物の用途変更の手続きが不要となりました! 」パンフレット
https://www.mlit.go.jp/common/001299734.pdf

「4号特例」2025年法改正に注意!

「四号特例」が、2025年の省エネ基準適合義務化と合わせて、大幅に縮小され(実質的な廃止)、「新3号建築物」(200㎡以下の平屋木造)にのみ特例が残る。2階建て木造住宅は構造審査が実施されることに加えて、木造で延べ面積300m2超の建物に構造計算を義務付けへ。さらに、省エネ基準適合のための必要壁量の割り増しもある予定。>>4号特例が変わります – 国土交通省

小規模伝統的木造建築物等に係る構造計算適合性判定の特例

伝統的構法等で新築するときは限界耐力計算など高度な構造計算により構造安全性を検証し、建築確認における構造計算の審査に加え、構造計算適合性判定【適判】による確認が必要になりますが、2022年の改正により、小規模な伝統的木造建築物等については【構造設計一級建築士】が設計又は確認(構造計算)を行い、専門的知識を有する建築主事等が建築確認審査を行う場合は「構造計算適合性判定を不要」になります。ただ建築確認の審査機関は専門的知識を有する建築主事等(適判資格保有者を想定)がいる機関にしか出すことができない。・・・施行日は公布日(令和4年6月17日公布)から3年以内、未定。用途変更等で建築確認が必要なときは気をつけましょう。>>建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し

NIPPONIA 地域再生ビジネス ─ 古民家再生から始まる持続可能な暮らしと営み 
2022/10/31 藤原 岳史 (著)

「NIPPONIA」、全国の地域に増え続ける古民家・空家を活用した宿泊施設のこと。が、それだけではない。NIPPONIAの本質は、宿泊施設を基点とした、まちづくり事業ならびに地域再生にある。本書は、NIPPONIAを先導する株式会社NOTE代表藤原 岳史による初の著書であり、なぜNIPPONIAが日本の地域再生に資するのかが克明に記された貴重な1冊でもある。・・・稼働率30%からの再生

地域再生の失敗学 (光文社新書) 新書 – 2016/4/19
飯田 泰之 (著), 木下 斉 (著), 川崎 一泰 (著), 入山 章栄 (著), 林 直樹 (著), 熊谷 俊人 (著)

やらかしてしまった地域再生絡みの失敗、NG集。あるある満載。反省しきり。最初の章が秀逸でした。その他行政の問題をあげています。当たり外れの外れが多いということでしょう。

答え

低層住宅の良好な住環境を守るための用途地域である「第一種低層住居専用地域」では、下記がOK・NGです。・・・その他規模など他の要件にご注意ください。

岸和田五風荘 がんこずし屋敷シリーズ「五風荘」(登録文化財・歴史的建造物の活用例)
がんこ岸和田、お屋敷シリーズ「五風荘」(登録有形文化財:岸和田市所有を大改装!)

一低専でのOK用途

住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿 など、日常的に静かに暮らす住まいはOK。

交番や銭湯、神社、寺院、教会もOK
病院・学校関係なら、幼、小、中、高、図書館、診療所(19床以下)、保育所OK
老人ホーム、福祉ホーム等OK
最近多い、介護施設(老人福祉センター、児童厚生施設等)などは小規模(600㎡まで)ならOK

※無床の診療所は用途変更不要です(用途変更が必要な特殊建築物から除外)。

住宅並み用途としての「民泊」はどうか?

あいにく2018年民泊新法に期待をかけていましたが、住居専用地域系ではやはり民泊営業ができません。(概ねどの都道府県でも)ただし、首長の許可をえればOKのようです。もちろん地域住民の合意形成も必要です。トライしてみてください。廃屋になるよりは地域は民泊を望むかもしれませんし、インバウンド頼みにしろ延命できることにまずは意味があるかもしれません。>>民泊関連(内閣府規制改革推進室等提出資料 2016.11)

一低専での兼用住宅OK用途

住宅でない床面積=50平米以下かつ建築物の延べ面積の1/2未満のものならOK。50平米というと関東間でいう30帖(15坪)ぐらいですから、八帖3室+六帖ぐらい。簡単な店舗や喫茶店、事務所ならできますね。

ただし、住宅以外の用途といっても、小事務所、日用品などの店舗、食堂・喫茶店、理髪店、美容院、クリーニング取次店、洋服店、畳屋・建具屋、自転車屋、電気屋等はOK.(地域住民が主に使うからOK。)

学習塾、華道教室、囲碁教室等OK

美術品又は工芸品を製作するためのアトリエ又は工房(原動機設備は出力総計が0.75kW以下)OK

また、パン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋等の自家販売用なら、小工場もOK

事務所はOKですが、あくまでSOHO型の事務所なので、インターネットによる通信販売の場合には、製造はNG、商品の受け渡し(発送)NG、在庫もNGとなります。Web制作や、コンサル会社、設計事務所、弁護士事務所などPCあればできるような業種、在庫のない事務所は向きますね。

ただし、兼用住宅の定義について

法別表第2(い)項第2号に定める「兼用住宅」とは、住宅と一緒にこれらの用途に供する非住宅部分を設けたものであり、「住宅と非住宅部分が構造的にも機能的にも一体となっていて用途的に分離しがたいもの」でないといけません。複数棟の使い分けによる商用利用が難しいといえます。また住まねばなりません。

一低専でのNG用途

店舗だけ、事務所だけはNG

ホテル・旅館やパチンコ屋や風俗系はもちろんNG

あいにく、不特定多数が立ち寄る用途の場合、それが営利目的か否かにかかわらず、展示場・運動施設はNG

大学、専門学校、病院(20床以上)もNGです。

48条の公聴会で用途許可を得た、一低専での活用例

どうしてものときは、48条の公聴会と建築審査会を経ての用途許可を得ないといけません。121212

2012.12.08開業した元三洋電機創業者・井植氏の旧居「旧ジェームス邸」(神戸市垂水区塩屋町・1934築・市指定文化財)は、婚礼施設を兼ねたフレンチレストランとして再生(運営:ノバレーゼ)。主屋は文化財なので3条適用の緩和を受け、また一低専にて本来規制されている用途への「用途許可」を得ての開業とのこと。周辺地域との良好な関係性がないとなかなか難しい活用事業。披露宴会場棟とチャペル棟を増築するという。

問題は固定資産税

住宅と違って事業用に使用することで固定資産税がうんとアップ。「民泊」営業してももちろんそう。その分を補うだけの売り上げが見込めないと結果的に事業収支が合わないことになって大誤算ということになりかねないので注意しましょう。これは建物が文化財で税的な優遇があっても必ずしもタックスヘブンではないということ。

AIによると、

住宅用から商用利用になると、固定資産税は上がります。

住宅用地は、住宅用に利用されている土地に対して適用される特例があり、課税標準額を評価額の6分の1に抑えることができます。そのため、住宅用地に適用されている場合、固定資産税の税額は、住宅用地以外の宅地に適用される税額の約1/6程度となります。

しかし、住宅用から商用利用になると、住宅用地の特例が適用されなくなり、住宅用地以外の宅地と同様に課税されるようになります。そのため、固定資産税の税額は、住宅用地に適用される税額の約6倍程度に上昇することになります。

Bard あくまでBard

一低専で歴史的建造物として保全しながら、経費を安く、かつ幾らかの収入をと思うならば、あくまで住宅という体裁を保ちつつ、50平米までかつその建物の1/2の面積の範囲で店舗や事務所とし、静かに暮らすことで、税務署の過剰反応を避けるよう考えましょう。特に広大な敷地の場合は税務署の判断は大きくその後の活用方針に影響しますから。

住宅兼用の事務所・店舗なら、主たる用途部分以外に展示目的のスペースや会議室が従属的にあり、そこで有料の喫茶程度はOK、またその中で少量の物販もOKです。

主たる用途が成人向けの研修部門(研修所・保養所)であれば、事務所扱いできるので、従属的な部分(湯沸し室・会議室・応接室・廊下等)を住宅に含めることで活用しやすくなると考えられます(建築指導課の考え方にもよりますが、筆者の経験ではかなり柔軟な対応でしたよ)。

一部を歴史的建造物の管理団体事務所にし、他を見学や研修のための施設とし、貸し室代と入場料で少しは経費を補っているケースもありますし、住みながら「暮らしそのもの」を見学・レクチャー(料理やしつらい実習など)することで見学料・レクチャー料を得ている京町家もあります。

町家の活用 舟板を使った板壁

また音響機器の製作アトリエ兼別荘として活用し、週末ごとに私的なライブを開いて地域の活性化にも寄与しているケースもあります。実費程度ですが、飲食の提供や演奏チャージで経費をまかなっているようです。

歴史的建造物(仮に既存不適格建築物)の活用のためには工事が必要になります。

小規模な四号建築物(平屋か2階建て小規模木造住宅)であるなら、改修工事だけなら、大規模修繕・大規模模様替えは確認申請の対象に含まれないので少し気が楽ですね(ただし、建築基準法はもちろん遵守のこと)。

気になる耐震性について

歴史的建造物の多くは、既存不適格建築物ですが、住宅からの活用の場合、住宅並みの荷重が考えられる用途での活用では、耐震性能は問われません(安全性の確保は当然必要です)。建築時に構造に対する法律がなかったからです。

既存不適格建築物とは、建築した時には適法、もしくは法の網が掛かっていなかった時代に建てられた建物で、その後の法改正によって現行法(建築基準法、都市計画法、消防法など)に対して全体が不適格、もしくは不適格な部分が生じてしまった建物のこと。

4号建築物とは、建築基準法6条1項4号で規定する建築物で、「2階建て以下・延べ面積500㎡以下・高さ13m以下・軒の高さ9m以下」のすべてにあてはまる木造建築物。通常の木造戸建て住宅は概ねこれにあたる。

2025年法改正に注意!「四号特例」が、2025年の省エネ基準適合義務化と合わせて、大幅に縮小され(実質的な廃止)、「新3号建築物」(200㎡以下の平屋木造)にのみ特例が残る。2階建て木造住宅は構造審査が実施されることに加えて、木造で延べ面積300m2超の建物に構造計算を義務付けへ。さらに、省エネ基準適合のための必要壁量の割り増しもある予定。

既存建築物の用途を変更して、下表に挙げる特殊建築物の用途で、200㎡を超えるものとする場合建築基準法の「用途変更」と呼び、確認申請が必要です。

一低専で考えられる「住宅から200㎡を超える用途変更」にあたるのは、幼、小、中、高校、図書館は論外として、診療所、保育所、下宿 、寄宿舎、共同住宅にする場合で、逆に左の用途で200㎡を超えない場合「用途変更」の確認申請は不要となります。

★2019.12建基法改正で、

○ 戸建住宅等(延べ面積200㎡未満かつ階数3以下)を福祉施設等とする場合に、在館者が迅速に避難できる措置を講じることを前提に、耐火建築物等とすることを不要とする。
○ 用途変更に伴って建築確認が必要となる規模を見直し(不要の規模上限を100㎡から200㎡に見直し)。

1※劇場 、映画館、演芸場
2観覧場
3※公会堂 、集会場
4病院
5※診療所 (患者の収容施設のあるものに限る。)、児童福祉施設等
6※ホテル 、旅館
7※下宿 、寄宿舎・・・シェアハウスはここに含まれる
8共同住宅(グループホーム系、居住型老人福祉施設)
9学校
10※博物館、美術館、図書館
11※体育館、ボーリング場、スケート場、水泳場、スキー場、ゴルフ練習場 、バッティング練習場
12※百貨店 、マーケット、その 他の物品販売業を営む店舗
13展示場
14※キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー
15ダンスホール
16遊技場
17公衆浴場
18※待合、料理店
19飲食店
20倉庫
21自動車車庫
22自動車修理工場
23※映画 スタジオ、テレビスタジオ
※印を付した番号のそれぞれに列記する相互間 の用途での用途変更については確認不要。
ただし、「 5」、「 10」に列記する用途に供する建築物が第一種及び第二種低層住居専用地域にある場合、又は「11」に列記する用途に供する建築物 が第一種及び第二種中高層住居専用地域若しくは工業専用地域にある場合については、それぞれの番号内に列記する用途相互間であっても確認が必要である。

大規模な歴史的建築物の活用

床面積200坪を超える歴史的建築物である場合(たとえば大庄屋や旅館、豪邸など)の活用としては、200㎡以内にエリアを限って収益施設に用途を変更・改修し、それ以外を住宅もしくは住宅との共用とすれば全体が活かすことができます。

たとえば母屋の一部を収益組織の事務所*にし、そこで小規模な物販や軽飲食を提供*します。母屋のほかの座敷などは見学、談話や催しに使用(貸し室可)、離れは屋敷の管理人かつそこをアトリエ・工房にする創作家の住まいとすることができます。蔵は展示施設もしくは、貸しギャラリーにも使え、庭など外部空間は野外の催しに使えます(庭に用途変更などの建築的な規制がありません)。会社の研修施設を兼ねて会議や接客にも兼用できれば利用価値・頻度があがるので、多様なメリット(金銭的だけでない相乗効果)が見込まれます。

200㎡以内に用途変更エリアを絞るには限界がある場合には、できるならば敷地を分けて管理するのも検討しましょう。→開発行為に注意しましょう。

法第3条適用除外

それでもなお広く用途変更を望むなら、既存不適格建築物特典を活かすほか、文化財や景観形成重要建造物などへの国宝、重要文化財建造物が自動的に建築基準法を適用除外(法第3条第1項第1号・第2号)できることに準じて、そのほかの歴史的建築物についても条例の制定により、安全性の確保等について建築審査会の同意を得ることで、建築基準法の適用除外が可能になることを利用する(まだ限られた自治体、代替え措置が必要)。

消防用設備等の基準の適用

歴史的建築物をカフェ、レストラン、物販店や宿泊施設として活用する場合には、それぞれの用途に伴う火災危険性に応じて、最低限必要と考えられる消防用設備等の設置等を行う必要があるが、消防法施行令第32条に基づき、消防長又は消防署長が火災の発生又は延焼のおそれが著しく少ない等と認めた場合、消防用設備等の設置基準に関し、特例を適用することが可能となっているのでこれを利用する(代替え措置が必要)。

ケアのカリスマたち-看取りを支えるプロフェッショナル– 2015/3/24
上野千鶴子 (著)

在宅介護・看護・医療のフロントランナー11人に体当たり!在宅看取りのノウハウからコストまで、大胆に切り込んだ対談集。古民家活用のヒントにもなりました。

キーワードを紹介しておきます。

  • おひとりさまの在宅ケア
  • 在宅ホスピス医と訪問看護
  • 地域包括ケアと在宅ひとり死
  • 介護アドバイザー
  • 高齢者向け住宅プロデューサー
  • 自費の介護サービス-スーパーホームヘルパー
  • 看取り士
  • ホームホスピス
  • 介護格差
  • 医療職並みの介護職収入