建築家内藤克雄の足跡2 旧西脇町消防屯所＞＞http://www.kazabito.com/2373
建築家内藤克雄の足跡3 旧高瀬邸＞＞http://www.kazabito.com/2375
建築家内藤克雄の足跡1 西脇市立西脇小学校
校舎正面 背景の山が射丘
所在地：西脇市立西脇小学校 兵庫県西脇市西脇656
2008年 兵庫県の景観形成重要建造物に指定
2013年度、兵庫県は、景観形成重要建造物の保存活用にあたり、建築基準法の適用を除外できるよう、「現状変更の規制及び保存のための措置」を講じる「認定景観形成重要建造物」制度を創設。
2017年、西脇小学校は、景観形成重要建造物の「保存活用計画」の認定（第１号）で、改修工事を行った後、引き続き、現役の木造校舎としての保存活用へ。
※主な改修工事：耐震補強、建設当初の外観復原（第１校舎玄関等）、バリアフリー化、老朽化部材の更文化庁2021年5月21日文化庁文化審議会文化財分科会の審議・議決を経て、重要文化財に指定することを文部科学大臣に答申（他6件）。この結果、官報告示を経て、国宝・重要文化財（建造物）は、2,530件、5,253棟（うち国宝228件、291棟を含む。）となる。「西脇市街の北西に所在する小学校校舎3棟。木造二階建ての校舎を並列に配置し、当時の典型的な小学校校舎の形式を示す。簡潔ながら上品な洋風基調の意匠でまとめられた、現在では希少となった現役の戦前に建築された木造校舎として重要」とする。＞＞
兵庫県の戦前築の木造校舎「黒川小学校」南棟解体の危機＞＞
2019年9月西脇小学校木造校舎保存改修工事が竣工（＞＞西脇市HP）。詳しくはFB「西脇小学校の木造校舎を想う会」など参照
この校舎は西脇市役所西方700m、八日山（校歌の中の射丘のこと）の東側に『西脇尋常高等学校』として昭和9年から11年（1934～36）にかけて建設されたもの。
内藤和洋建築設計事務所（現：内藤建築設計事務所）の内藤克雄（1890-1973）の設計による。
その事務所で今も大切に残されている詳細な図面を参考に当時どんな思いでこの小学校を設計したかを推察することにする。 間口36間（65.45ｍ）奥行き31.5尺（9.54m）、木造二階建て、宝形の屋根が乗り、全三棟を貫く中央の通路を挟むシンメトリーな建物。コンクリート造の布基礎に土台を乗せる西欧化した典型的な木造建築の構法で、先の大正12年（1923）の関東大震災による木造強化策はもちろん、昭和9年（1934）の室戸台風もこの設計に影響を与えたかもしれない。
主要な柱（5寸角）や梁の構造材には、木目の細かい良材のベイマツを使い、壁は貫と竹木舞の荒壁下地でを構成しつつ、見えないところで火打ち、ブレースや緊結金物で剛性をとっている。 内装は漆喰塗りの真壁で、ピーラや突き板張り合板を使った腰板・高腰が付く。一方外壁には、当時斬新な素材、スレートを杉板の代わりに下見板張りにして、コストダウンしながら明確な表皮としている。
スレートの使用は、防火への備えと言う意味もあったのであろうか。但し、第三棟の少なくとも東壁には、同色にペイントされた杉板も使われている。
意匠としては、正面玄関には象徴的なハーフティンバー風のファサードを見せ面材であるスレートをホワイト、額縁材をパステル調のグリーンに塗り、明るさと清潔さの感じる小学校にスタイリングしてある。当時はさぞかしモダンな印象を与えたであろうし、インターナショナルなアカデミック性を醸し出すことに成功していることが、同時期に全国で建てられたの他の小学校との相違点であろう。
しかし、建築当時は日本国の好戦姿勢に一層きな臭さが増す時期、同建築家の手による校門の鉄扉も軍事物資として供出させられたということを伺った。さわやかな学校建築であるが、「負の遺産」を影で背負っていることも決して忘れずに、大切に使い、次世代を担う児童の夢を育んでいってほしいいものである。
左：2階一般教室 右：外壁材は波板と平板のスレート
西脇小学校校歌 高浜年尾作詞 藤原優作曲
1.
過去の流れに 生い育ちつつ
津万の春秋その昔より
鍛冶の音絶えて はた織りまちに
今のさかえを 我が父母は
射丘のほとり この学舎に
2.
多可の山並み 日はかがやかに
あした夕べを みないそしみて
歴史をたずね くらしたのしむ
心やしない わがはらからは
射丘を仰ぐ この学舎に
中央の通路から玄関の見返し
参考文献：内藤正克「父の思い出と「建築家冥利」」（記事） 西脇市役所ホームページ 「つどい」2001年12月号兵庫探訪 西脇小学校『学校要覧』
取材・図面協力 内藤建築設計事務所 内藤正克
2002年 兵庫県建築士会会誌つどい「兵庫探訪」連載記事 写真・文 稻上文子
